麻美ゆまさんの体験談から、社労士が闘病と働き方の関係を考えてみた。 (榊裕葵 社会保険労務士)
シェアーズカフェ・オンライン 2014年7月31日(木)04時58分配信

昨日、言論サイト・BLOGOSと日本財団が共催したブロガーミーティングに参加をさせていただいた。ミーティングは「女性と闘病」をテーマに、若くして難病を経験された大野更紗さん、麻美ゆまさんとの対談形式で行われた。

お二人が病気を発症したときの様子、闘病中の気持ちの動き、現在の活動などを赤裸々に語ってくれたのを聞いて、私も様々なことを感じ、また、考えさせられた。

■難病を患った人の気持ち
対談の中で私がとくにハッとさせられたのは、大野更紗さんの「難病を患った人も安心して働ける職場環境がもっと広がればいいのに。」という一言だった。

麻美ゆまさんも、自身はタレントで個人事業主なので闘病中に収入が0になって心細かったことを語るとともに、入院時の病院や、現在の講演活動の中でも、思うように仕事ができず苦しんでいる人たちに出会ったことについて触れていらっしゃった。

これらの話を聞いて、私は正直、恥ずかしくなった。

私は社会保険労務士として「リスク回避型就業規則」だなんて偉そうなことを言って、病気になった社員を、会社がいかに法的リスクなく解雇できるか工夫を凝らした就業規則を作って満足していたが、病気に苦しんでいる人たちのことを、これっぽっちも考えていなかったのではないかと自責の念にかられたのだ。

今日の貴重な気付きを、今後の仕事に是非とも反映させていきたい。

■避けられない会社にとっての負担
しかし、一方で、私は自分の仕事のスタンスを全否定しなければならないとまでは思っていない。

というのも、資金・人的資源ともに豊富な大企業ならばともかく、経営体力の弱い中小企業が、病気で長期休職をしている社員の復帰を長い目で見守るのは難しいというのも、また事実であるからだ。

病気の社員がいるからといって、客先が納期を待ってくれるわけではないし、銀行が借入金の返済期限を猶予してくれるわけでもない。

また、休職している社員の賃金は、確かに休職期間中は無給にできるが、社会保険料は本来の賃金を基準に決められているので、会社に籍がある限り負担し続けなければならない。

この点、社会保険料は、社員の賃金から額面の約15%を天引きし、会社がさらに同額を拠出して、額面の約30%を会社の責任において政府に納入するルールになっている。社員が無資力になると、事実上、会社が30%全部を延々と負担せざるを得ない事態も起こりうるのだ。

業務面から言っても、余剰要員を抱えられない中小企業は、1人でも人数が欠けるとシフトが回らなくなったり、業務が滞ったりするので、病気になった社員に長期療養や、出勤日の限定・勤務時間の短縮といった措置が必要ならば、退職をしてもらって、新しい人を採用したいと経営者が考えるのはやむを得ないことである。

■解決には公的支援の充実を
この点、大野更紗さんは「誰もが難病を患う可能性はあるのだから、そのような社員を排除しない会社が、働きやすい会社なのではないだろうか」とおっしゃっていた。

私も考え方としては大いに賛成である。しかし、大企業ならばともかく、やはり、中小企業ができる努力には限界があるし、経営体力を超えた努力を強いるべきではない。

私はこの矛盾を解決し、会社と、病気と闘う社員の双方がハッピーになるためには、国による支援が必要不可欠なのではないかと考えている。

例えば、先ほど社会保険料の負担が大きいことを述べたが、「難病と定める一定の病気で休職している社員に関しては、労使とも保険料を免除する」という施策を導入することは真っ先に考えられるであろう。

また、病気による休職期間について、その人の休職期間中に仕事を代理する派遣社員などを採用した場合には、助成金を支給するということも一案であろう。現在も、育児休業に関しては、「両立支援助成金」という助成金制度が存在し、育児休業を取得した社員のピンチヒッターとなる人を採用した場合には国から金銭が支給されているのだ。

さらには、段階的な職場復帰を支援する法制度の整備も必要ではないだろうか。

先ほど育児休業の例が出たが、育児介護休業法には、育児休業から復帰した後も、子どもが大きくなるまでの一定期間は、社員が希望すれば、労働時間の短縮や、残業の免除等を受けられることになっている。

これと同様の段階的な職場復帰を促す法制度を、病気からの復帰を目指す社員に対しても導入するのである。そして、受け入れる会社側にはリスクがあることに配慮し、助成金を支給することで会社のリスク緩和を図り、バランスを取ることも合わせて検討すべきであろう。

■まとめ
このように、難病を患った社員への支援は、決して一企業の努力だけで実現できるものではないので、まずは、法律や助成金の整備など、公的なサポートの充実が必要不可欠である。

一方で、そのような制度が出来た際には、私たちはこれを「宝の持ち腐れ」にしてはならない。

大野さんや麻美さんは現在、難病を正しく知ってもらうための講演会や執筆などの活動に力を入れているとのことであった。このような取り組みを広げていき、私たちが病気のことを正しく知って、万一職場の仲間が難病を患ったときには、「あいつのせいで仕事が滞る」というネガティブな反応ではなく、闘病を励まし、職場復帰を助けられるような行動を取れるようになりたいものである。

つまり、病気からの職場復帰をサポートする法制度や助成金の整備と、病気になった社員をはじき出さない企業文化の醸成が、まさに、病気と闘う社員が安心して職場復帰を目指せるような社会をつくるための「車の両輪」になるのではないだろうか。

特定社会保険労務士・CFP 榊裕葵 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140731-00010000-scafe-bus_all#!bBFZhbより


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